vol.93 『高等学校等 就学支援金』のお話と注意点

文部科学省が実施している「高等学校等就学支援金(返還不要の授業料支援)」制度について、簡単にご説明します。

文部科学省「高校生等への修学支援」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm

わかりやすく言うと、高校に子どもを通わせる方への「国からの支援金」ということです。
といっても、最初から支援金がもらえるのではなく、後から申請して返金してもらう形式です。

文科省の資料を、菊地が簡単にまとめます。
キーワードになるのは「世帯年収」です。
下記の年収目安は、給料年収のみの4人世帯(夫婦・子供2人)をモデルとした場合です。

≪公立高校に通う生徒≫
対象:世帯年収 約910万円までの家庭
支援金額:授業料 年額118800円(授業料全額に相当)

≪私立高校に通う生徒≫
対象:①世帯年収 約590万円までの家庭
②世帯年収 約590~910万円までの家庭
支援金額:①授業料 年額396000円まで
      ※通信制の私立高校 297000円
②授業料 年額118800円まで

と定められています。
公立高校は世帯年収が約910万円までであれば、国からの支援金で授業料は実質0円になります。
私立高校に子どもを通わせる場合は、世帯年収によって2段階の支援金が設定されています。世帯年収が約590万円までであれば、国から年396000円が支援金として出ます。
約590~910万円までの世帯年収の場合は、公立高校に通うお子様がいる家庭と同額の年118800円が支援金となります。

さらに、都道府県によって金額が異なるのですが、別途支援金が上乗せされるケースもあります。
ここで注意しなくてはいけないのが
「あくまで支援金の対象は授業料のみ」
ということです。

公立高校であっても私立高校であっても、制服代や教科書代さらには修学旅行等の積立金が別途発生します。
これは就学支援金の対象外です。公立高校の場合は、その金額に学校毎の差はほぼありません。

ところが、私立高校は注意が必要です。
授業料以外に発生する費用が、学校によって大きく異なるからです。
では、具体的に実際に存在する私立高校3校を例に挙げて、入学後費用について見てみましょう。

 

(1)私立A高校(千葉県)

入学金 350000円
授業料 年327600円

⇒就学支援金対象

教育充実費 年123600円
施設充実費  年48000円
生徒会費  年8400円
生徒会入会金 年200円
後援会費  年36000円
後援会入会金

※入学時のみ

10000円
学年積立金 年158400円

※学年積立金…旅行積立金・各種検定料・学級諸経費

 

(2)私立B高校(千葉県)

入学金 150000円
施設設備費 

※入学時のみ

150000円
授業料  年384000円

⇒就学支援金対象

設備維持費  年192000円
生徒会入会金 ※初年度のみ 4000円
生徒会費  年9600円
後援会入会金 ※初年度のみ 20000円
後援会年会費  年30000円
後援会周年事業積立  年12000円
諸費
教養費 年32400円
卒業記念費 年18000円
生徒総合補償保険料  年1900円
預り金・その他
副教材費 年52000円
ICT教育関連費 年34000円
学習支援費 年48000円
iPad 年68200円

※他に修学旅行費(積立)・校外学習費・制服代等あり

 

(3)私立C高校(東京都)

入学金  388000円
授業料  年480000円

⇒就学支援金対象

施設維持費  年30000円
冷暖房費  年24000円
図書費  年2400円
視聴覚費  年2400円
教育充実費  年144000円
PTA会費  年12000円
教育振興費  年36000円
生徒会費  年3600円
同窓会費  年1200円
英語取り出し授業費※希望者のみ 年120000円
PCなどの情報端末機器購入  別途
学校施設設備拡充資金寄付(任意) 1口100000×2口以上

※積立金…修学旅行費・副教材費など

 

どうですか?
この3校を比較するだけでも、授業料を含めたあらゆる費用が大きく異なることがわかっていただけたと思います。
これに制服代(約10万円)や、学用品一式(約5万円)、コートやニットベストなど希望購入品(約5万円)が別途あります。

もちろん費用が高額ということは、それだけお子様が受ける教育サービス・学習環境が素晴らしい!(はず)ですから、期待して良いと思いますが、これらの金額についてもチェックをしておきましょう。

なぜこれだけ入学後の費用について述べたかと言いますと、私立高校主催の説明会では「一切お金の話はしない!」からです。
おそらく中学生がいる前でお金の話をするのは…という高校側の配慮があるのでしょう。
それは理解できます。

でも授業料以外の費用項目に、謎めいたものがとても多い!
後援会年会費、教養費、学習支援費、教育振興費。
そして「任意です。」と言いながらも、払わないと気まずくなりそうな寄付金。
これらの費用がどういったものでどう使われるのか?という説明を、私は1度も受けたことがありません。

高校主催の説明会に参加してみて、学費等で気になる項目があったら、遠慮せず説明会終了後に質問してみてください。
そういう質問をしても、入試で減点されることは絶対にありませんので、積極的に高校の先生に声をかけましょう。